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月刊 理科の教育2024年5月号 一般社団法人日本理科教育学会/編

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特集:「できる!観察・実験」リスクマネジメントの一工夫 「直接体験」の確保に向けて コロナ禍による観察・実験の自粛の際、工夫を凝らした実験動画などによる授業は、児童生徒が観察・実験を通して学びを深められるよう知恵を絞った成果であり、万が一同様の危機が再来したときの保険として、このノウハウは今後も引き継がれていくべき手法の一つと言えるでしょう。さて、ポストコロナの理科授業として、観察・実験も従来と同様に行われるようになってきました。しっかりと安全が確保された指導の下で行われる、観察・実験を通した理科の授業は、自然との関わりを豊かにするための大事な経験です。一方で、コロナ禍の規制がなくなった現在も、一部ではいまだ観察・実験を動画やプリントに置き換えた授業が行われているという声も聞こえてきます。理由は「子どもが失敗やけがをすることがないから」「準備や片付けの必要がないから」とのことです。新聞報道などでは、観察・実験中の事故が大きく取り上げられる傾向にあり、目にする機会も多いでしょう。近年では、小学校でカセットコンロにつけるガスボンベからガスが漏れ、児童が体調を崩した事故や、中学校では 硫化水素を発生させる実験で生徒が実験中に気分が悪くなり、救急車を要請した事故が報道されたことも記憶に新しいです。そういったことが原因で、特に経験の浅い先生方は観察・実験を避けてしまう可能性はないでしょうか。中学校学習指導要領解説理科編には「事故を心配する余り、観察、実験を行わずに板書による図示や口頭による説明に置き換えるのではなく、観察、実験を安全に行わせることで、危険を認識し、回避する力を養うことが重要である」と記されています。観察・実験などの活動は、児童生徒に科学的な知識を身に付けさせたり、科学的に探究する力を育てたりする上でも重要なものです。また、観察・実験の技能は、実際にそれらの活動を行って初めて習得されるものであり、児童生徒の興味・関心や科学的に探究しようとする態度といった情意面での望ましい発達を図るには、実物を直接目にして驚いたり、感動したり、疑問をもったりする観察・実験、時には実験室を飛び出した野外観察もよいでしょう。本特集では、児童生徒自身が危険を認識し、回避する力を養う一工夫について、全国の先生方が試行錯誤の末に見いだした視点や方法を紹介します。本特集を通して、実物を直接目にして驚いたり、感動したり、疑問をもったりする観察・実験の在り方、リスクマネジメントの一工夫を考えてみましょう。そして、観察・実験に不安を抱える先生方がリスクマネジメントの方法やアイデアを知ることで、より楽しく、安全な観察・実験が全国に広がっていくことを期待しています。 (『理科の教育』編集委員会)