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月刊 特別支援教育研究2024年9月号

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文部科学省は、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査(※)を10年ぶりに実施し、その調査結果が令和4年12月に公表されました。「学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒は小中学校では8.8%となり、前回調査(平成24年度)より、2.3ポイント増加していることが大きく報道されました。この中で「行動面で著しい困難を示す」のは、小中学校で4.7%とありますが、実際はそれ以上に、通常の学級でも行動面に著しい困難を示す児童生徒と想定できます(※本調査は診断ではなく、あくまでも教員が捉えた困難ではあるものの、チェックリストで12ポイント以上を著しい困難を示す児童生徒としており、11ポイントの児童生徒も多数います)。 同調査の有識者会議は「学習面又は行動面で著しい困難を示す児童生徒のうち、校内委員会において特別な教育的支援が必要と判断されていない児童生徒については、そもそも校内委員会での検討自体がなされていないことが考えられる」(「有識者会議における本調査結果に対する考察」より一部抜粋)としています。なお、このことからも、行動面の課題について教育的な支援や指導がなされないまま、課題を抱えている児童生徒が一定数いると推察します。 これらの教育的支援を要する様々なケースの中でも、今号では近年多様な場で見られる「気になる行動」について、以下の五つのケースを取り上げたいと思います。 ① 不安を抱えている(教室に入れない等)児童生徒への対応 ② 性に関する気になる行動(適切な距離感が分かりにくい等)が見られる児童生徒への対応 ③ ゲーム・ネット(タブレット等)への依存等が気になる児童生徒への対応 ④ 感覚の過敏(食事場面等からの気付き、支援)等のある児童生徒への対応 ⑤ 自傷や他害等が見られる児童生徒への対応 これらには「児童生徒自身が困っている」「本人は困っていないが担任が困っている」等、様々なケースがあると考えられます。また、このような気になる行動への支援は、特定の場だけでなく、通常の学級をはじめ、特別支援学級や特別支援学校等、多様な場で求められていると考えます。 本特集ではこれらの行動面における困難に対応した実践を取り上げることで、同様の悩みを抱える読者のヒントになればと考えています。また、本特集によって、上述した悩みを抱える子どもたちや先生方を支え、勇気付けるとともに、周囲の理解を図るための情報提供につなげていきたいと考えます。