Product title

湯島春近の蕎麦イノベーション ―手打ちを超えるマシン打ち、もちもち十割細麺―

Product details

https://youtu.be/fjrqwvtyr94

監修:竹中雄三
1950年生まれ。74年東京大学工学部電子工学科卒後、(株)電通入社、営業、マーケティング関連で活躍、2010年定年退職。同年(公)日本マーケティング協会研究開発局長、15年から客員研究員。京都大学大学院、法政大学大学院でも教鞭を執る。著書に『笑うマーケティング』、『プロ直伝!成功するマーケティングの基本と実践』。マーケティング・コンサルティングとしても活躍中。

https://youtu.be/ZKsFEDDOWAk

著者:荒井 久
1945年長野県生まれ。68年東京電機大学電子工学科を卒業。大手出版社を経て2002年、株式会社ソリックを設立。16年株式会社春近を設立、東京・湯島におざんざ(信州うどん)の店「湯島春近」を開店。17年から蕎麦にも参入。主な著書に「ビットバレーの鼓動」、「モバイルインテ―ネットの鼓動」、「Web2.0の鼓動」など。

発行日:2020年6月29日
著者:荒井 久
監修:竹中雄三
装幀・デザイン・制作 吉田和子
サイズ:四六判
ページ数:184ページ
定価:1400円+税
発行所:株式会社ソリック
東京都文京区千駄木2-48-4-1101
http://www.soriq.jp
E-mail:arai@soriq.jp

蕎麦は不思議だ。蕎麦しか採れないやせた土地というから、蕎麦は栄養価が少ないかと思いきや、そんなことはない。小麦や米よりも炭水化物の比率はわずかに少ないが、逆にタンパク質の比率は多い。なにより、様々なミネラル成分を多く含み、ビタミンの含有量も多い。

日本には熱狂的な蕎麦(麺)ファンがいて、蕎麦人気は確立している。海外でも同様かと調べてみると、蕎麦麺として食べているのは日本と韓国ぐらいだけだ。それでは、蕎麦を栽培しているのは日本と韓国が主流かというと、全くそうではない。日本の蕎麦生産量はなんと世界の1%にも満たない。蕎麦に対する僕の常識は、世界の非常識だったということが思い知らされる。

ちなみに日本では蕎麦はほぼ全国的に栽培されているが、日本全国の生産量約3万トンのうち、約半分が北海道産だ。世界でも多くの国々で生産されていて、その数量は約383万トンに上る。このうち、ロシアが約152万トン、中国が145万トンと圧倒している。しかし、2国とも蕎麦麺を食べていない。いずれも日本でいう粥のような食べ方をしている。

4年半ほど前、僕とワイフは東京・湯島におざんざ(信州うどん)の店「湯島春近」を開業した。だが、僕が信州出身だったこともあり、蕎麦をやるよう強く勧められた。それで、開業2年目から蕎麦屋も兼業することになる。ところが、僕の興味は蕎麦の方に傾き、蕎麦に夢中になっていく。

この本は元々、「ニューヨークで蕎麦屋をやりませんか」というタイトルのつもりで書き始めていた。もちろん僕とワイフは美味しいとされる蕎麦屋を食べ歩いた。一方で、自分の蕎麦作りも磨いた。そうこうしているうちに、自分の蕎麦は誰にも負けない、と思うようになってくる。こんなに美味しい蕎麦だからこそ世界に広めたい。そう言う気持ちが芽生えてくる。世界に未開拓な蕎麦麺だが、莫大なマーケットが拡がっている。

世界に勧めたい理由には、「旨い」の他にこの蕎麦麺は誰でも簡単に作ることができるという点がある。僕は手打ちではなく、マシンを使っているからだ。わずか3年で僕は、すっかりマシン打ち熟練工になっていた。もちろん、手打ち十割蕎麦名人はリスペクトの対象だ。だが、マシン打ち十割蕎麦が、手打ちにそん色なく、むしろ手打ちを超える旨さを提供できることに、僕は大きな自信を持つまでになる。なにより、もちもちの細麺蕎麦が可能だ。

旨い蕎麦。しかも、長年の修行無くして誰でもできる。だから、世界へと思った。世界ならまず、ニューヨークだろう。単純な僕の思い付きである。しかも、蕎麦は小麦粉と違って、健康によいとされるグルテンフリーという特長もある。ニューヨーカーに受けるだろう。蕎麦つゆのこともある。日本人が発見した第5番目の味覚である「旨味」は、日本伝統の出汁によるもの。しかも、健康的だ。

よくよく考えてみると、マシンによって手打ちを超える旨い蕎麦が可能になる。しかも未経験者の僕でも、楽な方法で。それは、蕎麦の長い歴史の中でも、一つのイノベーションではないか。そう思うようになった。そのことに気付き、本書のタイトルは、ニューヨーク云々から「湯島春近の蕎麦イノベーション」に変わった。

本書の第1章では、「なぜ、ニューヨークで蕎麦屋なのか」と書き始めた。だが、ニューヨークで勧めるぐらいなのだから、日本の蕎麦関係者、蕎麦好きの皆さんにもご理解いただき、日本の蕎麦の世界でも何らかの突破口が開ければ、と思う。